救命胴衣は義務です|着けていなかったことで起きた現実
― 着けていなかったことで起きた現実 ―
救命胴衣の着用は、法律で定められた義務です。お願いではありません。漁業者も、遊漁船も、釣り人も、小型船舶に乗る人には関係する決まりです。
それでも事故は起きています。周防大島の近くでも、瀬戸内でも、知っている海で。
この記事を書くきっかけになった事故のことを、まず書かせてください。
身近で、本当にあった事故の話です。
その方は、救命胴衣を着けていなかったと聞いています。
数日後、運よく発見されました。
命は戻りません。
けれど、発見されたことで、家族の元へ帰ることはできました。
もし救命胴衣を着けていなければ、沈んだままだったかもしれません。見つからないままだったかもしれない。そうなっていたら、残された家族は、ずっと海を見ながら待ち続けることになっていました。
亡くなった後でも、家族の元へ帰ることができた。それは、たまたま発見されたからです。
救命胴衣を着けていたなら、浮いていた可能性があります。見つかる可能性が、今より高かったかもしれません。
見つからないままでいることが、残された人にとってどれほど苦しいか。それを考えると、救命胴衣の意味は「助かるため」だけではないと思っています。
救命胴衣は、命を守るためだけの道具ではありません。万が一の時に、沈まず、浮き、見つけてもらうための道具でもあります。
海に落ちた人が浮いていれば、捜索の手がかりが残ります。潮の流れを読んで、どこへ流されたかを推測できます。
沈んでしまうと、その手がかりが消えます。
潮に流されると、想像以上に遠くへ移動します。瀬戸内の潮は速い場所もあります。浮いているかどうかで、発見される確率は大きく変わります。
救命胴衣は、自分が助かるためだけでなく、自分の体を家族の元へ帰すための道具でもあります。
理由は分かります。
暑い。動きにくい。作業の邪魔になる。長年これで問題なかった。
そう思う気持ちは分かります。慣れた海だから、知っている場所だから、と思うことも。
事故は、慣れた頃に起きます。油断した瞬間に起きます。何十年も大丈夫だった人が、ある日落ちます。
「自分は大丈夫」という話ではありません。
「泳げるから大丈夫」は、陸の上の話です。
作業着を着ていると、体が重くなります。長靴やブーツは水を吸います。冷たい水に突然入ると、体が反射的に硬直することがあります。疲れた体では、思うように動けません。夜間なら、方向も分かりにくくなります。
泳げる人でも、こういった状況が重なると、短い時間で限界を迎えることがあります。
救命胴衣を着けていれば、浮いていられます。体力を温存できます。見つかるまでの時間を、少し稼げます。
義務だから積んでいる。船検があるから持っている。それだけでは、いざという時に意味がありません。
- →サイズが合っているか
- →ベルトが緩んでいないか
- →劣化・破損がないか
- →自動膨張式の場合、作動ボンベが正常な状態にあるか
- →実際に着けたとき、正しく装着できているか
一度確認してみてください。いつ最後に点検しましたか。
救命胴衣には種類があります。固型式、自動膨張式、それぞれ特徴があります。どれが絶対に正解というわけではありません。
大切なのは、毎日の作業の中で、自然に着けていられるものを選ぶことです。動きにくい、暑い、という理由で外してしまうなら、自分の作業に合ったものを選び直す必要があります。
着けていない救命胴衣は、ないのと同じです。
松田漁業用品店として、伝えたいこと
救命胴衣を売るためにこの記事を書いたわけではありません。不安を煽りたいわけでもありません。
ただ、今日も無事に港へ戻り、家に帰ってほしいと思っています。海に出る方に、当たり前のことを当たり前にやってほしいと思っています。
この記事を読んで、今日一度だけ、救命胴衣を手に取って確認してもらえたら、それで十分です。
- ✓救命胴衣の着用は義務です
- ✓積んでいるだけ、形だけでは意味がありません
- ✓着けていること、使える状態であることが大事です
- ✓救命胴衣は、浮いて、見つかり、家に帰るための道具です
自分のために。家で待っている人のために。今日もう一度、確認してみてください。